[ 20XX/ 02/ 0X ] 収容報告
収容物:特異性object「強化ヘルメット」
識別番号:■■-■■■■(以下「当object」と表記)
発見者:[ 検閲 ](親族に配慮し実名削除済)
概要:外見は市販のフルフェイスヘルメットです。
完全に被る事で装着者と骨格単位で一体化し、身体能力
及び自然治癒力を強化します。
これらは「当objectを脱ごうとする」事で消失します。当objectは自然発生的な物ではなく、特異性能力による
副次的なものと判明し、分類が変更されています。
詳細は
[当該報告書]を参照して下さい。
[ 20XX/ 02/ 0X ] 経過報告
当objectの効果には「強化された人間」に対し連想する
内容に準拠する傾向が観測されました。
歌で戦うヒーローを連想すれば発声器官が発達し、
超音速で走る姿を連想すれば物理法則を書き換え、
当objectが自立行動し逃げ出すと先入観を持てば
手から転がり落ちて逃走を図る、と推測されます。
なお[ 検閲 ]には、当object着脱後に挙動が鈍化する
症状が確認されましたが、他の被験者では未確認です。
現在当objectの発生原因について調査する為、発見時の
詳しい状況を[ 検閲 ]から確認しています。
[ 20XX/ 02/ 1X ] 緊急報告
[ 検閲 ]は人間ではなく、特異性能力保持者と特定
されました。潜伏型攻撃の可能性を考慮し、当objectは
今後、人間での実験が禁止されます。
[ 検閲 ]は以下の内容で登録し、以後の取り扱いは
ガイドラインに従って下さい。
[ 20XX/ 02/ 1X ] 収容報告
収容物:[ 検閲 ]
登録番号:■■-■■■■
[ 検閲 ]の隔離施設内はフルフェイスヘルメットの
持込が禁止されます。また施設に配属される警備員は
ヘルメット着用の際には、顔が露出する物の選択を
義務付けられます。
保持特異性能力:ヘルメット強化(仮称)
[ 検閲 ]は市販品のヘルメットに触れるだけで
特異性object:■■-■■■■-a へ変化させます。
当objectの詳細は当該頁を参照して下さい。
対象となるヘルメットはフルフェイスタイプのみで、
顔の露出する物や、目出し帽、或は両者を併用して
顔を隠した場合には影響は観測されませんでした。
[ 検閲 ]は比較的温厚な言動、また能力も対処が
容易であり、親族への社会的制裁を仄めかす交渉も
有効な事から、エクストラへの転向プロトコルが施行
可能と判断され、処分は保留となっています。
[ 20XX/ 03/ 0X ] 聴取記録
聴取対象:[ 検閲 ]
聴取担当:研究所職員■■(以下[ ■■ ]と表記)
聴取内容:アウトサイドおよび「強化された人間」
という言葉に持つ印象
音声:『えぇと、言葉は悪いのですけど、乱暴な、
というか… 学校や報道でも度々そう伝えられて
いますので… あの、秘密結社の、怪人…?
施設を壊したり人を襲っている映像、よく流れて
いますし… こういうとちょっと不謹慎ですけど
対戦ゲームのキャラクターみたいとでもいうか…
暴力に罪悪感がない印象がありますね…。』
以上の内容は[ 検閲 ]が当objectを装着時に
観測される粗暴な人格と非常に類似しており、
[ 検閲 ]は当object装着時に、身体能力に加え
人格も[ 検閲 ]の持つアウトサイドのイメージを
再現するよう書き換えている、と推測されます。
また[ 検閲 ]には自身が特異性能力保持者だと
自覚に乏しい事も聴取により判明しています。
[ 20XX/ 03/ 0X ] 経過報告
[ 検閲 ]が施設への移送中、アウトサイド組織に
強奪される事件が発生しました。
当objectの入手手段が限られた為、取扱の要求権限が
引き上げられます。
事件を起したアウトサイド組織:アウターエデンの
目的は現在も調査中です。
[ 検閲 ]が作成可能な当objectの上限個数は現在
不明であり、無差別な配布による社会的混乱、或は
装着者の自爆を誘発する潜伏型攻撃としての利用が
懸念されています。
[ 20XX/ 03/ 1X ] 追試番号■■■-101
被験体:エクストラ個体(腕力強化能力保持)
識別番号:■■(削除済。以下[ 腕力 ]と表記)
実験内容:当objectを「装着者の能力を強化する」と
[ 腕力 ]に説明し、自ら装着させる。
結果:[ 腕力 ]には[ 検閲 ]のような耐久や
代謝の向上は付随せず、[ 腕力 ]が保有する
「腕力を強化する」能力の向上のみ観測されました。
自身の能力を元にイメージした為と推測されます。
なお使用した[ 腕力 ]は本来以上の強化を受けた
腕力に耐え切れず自壊し、廃棄処分となりました。
[ 20XX/ 03/ 2X ] 追試番号■■■-102〜10X
被験体:エクストラ個体(腕力強化能力保持)
識別番号:■■(削除済)
被験体:エクストラ個体(腕力強化能力保持)
識別番号:■■(削除済)
被験体:エクストラ個体(腕力強化能力保持)
識別番号:■■(削除済)
・
・
・
実験内容:追試番号■■■-101と同様
結果:安定して追試番号■■■-101と同様の結果が
得られました。なお使用した個体も全て同様に
腕力に耐え切れず自壊し、廃棄処分となりました。
[ 20XX/ 04/ 2X ] 追試番号■■■-201
被験体:エクストラ個体(外的治癒能力保持)
識別番号:■■(削除済。以下[ 治癒 ]と表記)
実験内容:当objectを「装着者の能力を強化する」と
[ 治癒 ]に説明し、自ら装着させる。
結果:[ 治癒 ]には[ 検閲 ]のような耐久や
代謝の向上は付随せず、[ 治癒 ]が本来保有する
「任意対象を高速で治癒させる」能力の治癒速度のみ
向上が観測されました。
[ 治癒 ]は事前の聴取にて『傷付いた人をもっと
早く癒したい』と望んでいた事が判明しています。
[ 20XX/ 05/ 0X ] 追試番号■■■-202〜22X
被験体:エクストラ個体(外的治癒能力保持)
識別番号:■■(削除済。以下[ 治癒 ]と表記)
実験内容:当objectを「格闘能力を強化する別個体」
と[ 治癒 ]に説明し、自ら装着させる。
結果:複数回実施された試験全てで[ 治癒 ]に
身体および格闘能力の変化は観測されませんでした。
[ 治癒 ]は格闘経験がなかったと後の調査で
判明しています。
[ 20XX/ 05/ 1X ] 追試番号■■■-301
被験体:エクストラ個体(外的治癒能力保持)
識別番号:■■(削除済。以下[ 治癒 ]と表記)
被験体:エクストラ個体(腕力強化能力保持)
識別番号:■■(削除済。以下[ 強腕 ]と表記)
実験内容:当objectを「装着者の能力を強化する」と
[ 強腕 ]に説明し[ 強腕 ]の手で
[ 治癒 ]に装着させる。
結果:[ 治癒 ]には[ 検閲 ]のような耐久や代謝の
向上は見られず、[ 治癒 ]本来の能力も変化はなく、
[ 強腕 ]が保有する「腕力を強化する」能力の発生が
[ 治癒 ]で観測されました。
なお使用した[ 治癒 ]は強化された腕力に耐え切れず
自壊し、廃棄処分となりました。
また自壊した[ 治癒 ]の姿を見た[ 強腕 ]が暴言や
器物への攻撃等、敵対的な様子を見せた為、鎮圧後に
廃棄処分となりました。人的損害の発生はありません。
今後、装着に使用したエクストラ個体は退室させる等の
手順の見直しが提案されています。
[ 20XX/ 05/ 2X ] 経過報告
以上の結果から当objectによる強化現象は、
「装着させた者が」持つ認識や価値観、願望を再現し
装着者を「変化させている」ものと推測されます。
[ 20XX/ 06/ XX ] 経過報告
当objectの検証は余剰エクストラ個体を消費する
用途として現在も積極的な実施が奨励されています。
なお耐久性の向上により処分不能なエクストラ個体が
発生する事態を防ぐ為、検証計画書を事前に提出し、
要求権限を満たす職員複数名からの監修を経た上で
実施して下さい。
また「配備されたエクストラを排し当objectを装着した
人間へ転換する」案を複数の部隊が提出していますが、
現状エクストラの使用を推奨される損耗率の高い任務で
人的被害を増やす懸念や、特異性能力の擬似行使による
精神汚染リスク等を考慮し、認可されていません。
[ 20XX/ 08/ 1X ] 経過報告
発信元:エクストラ個体(認識隠蔽能力保持)
識別番号:■■(以下[ 隠蔽 ]と表記)
概要:アウターエデンに潜入中の[ 隠蔽 ]より、
[ 検閲 ]が別のアウトサイド個体の頭に被せた
バケツを当objectへ変化させたと報告がありました。
当初は[ 隠蔽 ]の規定違反(任務中の無許可発言及び
冗談等不適切な表現)或は何らかの精神汚染に暴露した
可能性から廃棄処分が検討されましたが、提出情報を
精査した結果、報告が事実であると判断されました。
この報告は[ 検閲 ]が保持している特異性能力が
ヘルメットに限らず、同程度の剛性で頭を覆える、と
[ 検閲 ]が認識している物なら、全て当objectに
変化させる可能性を示唆しています。
現在[ 検閲 ]が触れた可能性がある物品を、形状を
問わず回収、および検証が進められています。
[ 20XX/ XX/ XX ] 違反報告
違反者:研究所職員[ ■■ ]
違反内容:当objectの不正持出し
および不正な対象への使用実験未遂
概要:[ 検閲 ]の聴取担当だった[ ■■ ]により
当objectが不正に持出されました。異変に気付いた
同僚が取り押さえた為、不正使用は阻止されました。
聴取に対し、[ ■■ ]は
『[ 検閲 ]が当objectを着用してから胸囲が著しく
成長した事を聞き、羨望を抱いた』
という旨を供述しています。
また同僚への聴取から[ ■■ ]は自身の胸囲に
不満を持っていた事が判明しています。
[ ■■ ]は記憶処理を施し、別施設への異動処置が
取られました。また当収容違反を受け、当objectの
情報閲覧に新たな規制を設ける提案がされています。